虫歯が歯の根元に向かって進行が進んでしまっている場合、詰め物による治療となっていきます。詰め物や被せ物には幾つかの種類があり、特性や金額もさまざまです。
銀歯について
詰め物の種類にはいくつかありますが、代表的なものは銀歯です。金属を使用していることで耐久性があります。
銀歯は非常に強度が高いという特徴があります。
そのため、歯ぎしりや食いしばりの癖がある場合にもそれに耐えられるため安心できます。保険適用で1本が3,500円ほどで治療が可能となっています。
しかし、銀歯を取ったら知らないうちに虫歯が進行してしまっていたということがよく起こります。
金属は熱によって膨張したり、冷却によって収縮する性質をもっています。
このことにより、接着剤と銀歯の間に隙間が生じることがあります。
そこに虫歯菌が侵入することによって、表面的には気付くことがないまま虫歯が進行してしまうのです。
更に、銀歯は金属であるため、中には金属アレルギーを引き起こす可能性があります。
現時点で金属アレルギーの症状がない場合であっても金属イオンは溶け出すため、予期せず金属アレルギーを発症する可能性があり、歯肉が変色する可能性もあるとされています。
長期間の使用によって歯肉が黒く変色することがあるのですが、これも銀歯の金属イオンが溶け出したものが原因となります。唾液が金属を溶かしてしまうのです。
見た目については金属の銀色をしているため、どうしても目立ってしまいます。
銀歯が見えやすい位置にあるせいで見た目が気になってしまうという方は、CAD/CAM冠にするという選択肢もあります。
また、銀歯はセメントで残された歯につけられていますが、時間の経過と共にセメントが溶けだしてしまい、隙間ができたところに虫歯ができる危険性もあります。
銀歯のため、レントゲンを通しても状態を見ることができないことも状態の悪化を招きやすくなってしまいます。
通常、虫歯の部分を削ったあと歯型を取り、その型を使用して歯の石膏模型を作ります。
そして歯型を使用して銀歯を作るのですが、完成までに日にちを要します。
この期間に虫を削った後の歯を放置してしまうと食べ物が挟まってしまったり、歯が痛くなったりしてしまう可能性もあるので、代わりとなる仮詰めをすることになります。
仮詰めのものには、プラスチックタイプが使われることが多く、比較的やわらかい素材でできているため変形したり食べ物や飲み物によって変色することもあります。
そもそも、すぐに取り外すことになるため、耐久性は考慮されていないのです。
仮詰めがついている時の歯磨きは、通常の歯磨きより慎重に行う必要があります。
複数の歯をまとめて磨いたり、強く当てて磨いたりすると仮詰めが外れてしまう可能性があります。できるだけいつもより優しい力で磨くよう心がけましょう。
歯と歯の間の汚れを取ろうとして歯間ブラシやデンタルフロスを使用することにより、仮詰めが取れてしまうこともあります。
必ずしも歯の上に収まっているわけではないため、仮詰めの周辺に関しても注意して汚れを落としましょう。
仮詰めは歯に接着していません。ガムやソフトキャンディ、お餅やグミなど、くっつきやすい食べ物はできれば我慢したほうが良いでしょう。
万が一、仮詰めが取れてしまった場合には歯科医院に申し出ればつけ直してもらえますが行く手間がかかってしまいます。
意外と取れやすいものですので、付けている時は意識して過ごしてください。
CAD/CAM冠について
CAD/CAM冠はコンピュータで歯を設計し、そのデータを元にプラスチックとセラミックが混ざったハイブリッドセラミックを機械によって削ることで制作する被せ物です。
現代の金属価格の高騰であったり金属アレルギーの問題から、CAD/CAM冠の保険適応範囲が拡大しています。
ただし、治療する歯にによって条件を満たす必要がある場合もあるため、必ずしも適用されるというわけではありません。
金属アレルギーの心配がなく、保険適応で白い歯を入れられるという点から、銀歯からCAD/CAM冠への選択を検討している方も多いと思います。
金属アレルギーの症状は様々であり、手足のかゆみ、全身の発疹、味覚異常、頻繁にできる口内炎など、口内の銀歯が原因であるとなかなか気付かない場合もあります。
長年の不調の原因が実は銀歯であったということもあり得るのです。この不安要素を取り除くことが出来るのは嬉しいことです。
CAD/CAM冠は、ある程度の強度はあるものの元の歯のエナメル質より柔らかくなっています。そのため、食いしばりや歯ぎしりが強い場合は適用することができません。
強度を上げる目的で必然的に歯を削る量が多くなるため、基本的には神経を抜いた歯に適用することになります。神経を残したい方には適さない治療となります。
CAD/CAM冠の色は金属色ではなく白いため、目立つことはありません。そのため、虫歯が目立つ場所ある場合に気になることはなくなるでしょう。
ただ、透明感がなかったり、再現できる色が単色のため、天然の歯の色と比べて見ると特定することができる見た目となっています。
セラミッククラウンについて
セラミックは陶器の材料の一つであり、この素材を使った被せ物をセラミッククラウンといいます。
セラミッククラウンは歯との間に隙間ができにくいため、虫歯や歯周病になりにくいという利点があります。
その中でもオーラルセラミックは100%セラミックのみで作られている被せ物で、その他のものは金属やプラスチックなども使用しています。
オーラルセラミックは透明感や艶感があるため、特に前歯の治療に適しているとされています。セラミック素材は汚れがつきにくいという特徴があるため変色の心配もいりません。
セラミックは基本的に保険適用外であり、オーラルセラミックの場合、1本あたりの費用相場は数万〜数十万と高めの値段となります。
そのため、複数の歯を治療しようと思うとなかなか手を出せないという人も多いと思いますが、人気があります。
ハイブリットセラミッククラウンはプラスチックとセラミックを混ぜて作られたものです。
保険適用範囲が拡大しており、オールセラミッククラウンよりも費用を抑えられ、数万円ほどとなっています。
しかしながら、保険適用の治療を行なっている歯科医院は特定の基準を満たしている必要があり、数は限られています。
治療を希望する場合には事前に確認しておくことが大切です。また、衝撃に強いという利点がありますが、透明感や色に関してはオールセラミックに劣ります。
メタルボンドクラウンは土台となる内側には金属を使用し、外側の見える部分にセラミックを使用したものです。
セラミック治療の元祖と言われることもあり、オールセラミッククラウンよりも長い歴史をもっています。
見える部分はセラミックを使用しているため、変色がなく長期間美しい状態を保つことが可能となります。
ただ、内側は金属が使われているため、金属が溶けることによる歯肉の変色やアレルギーの可能性は避けられません。
セラミックが適応されている歯の寿命は10〜20年と言われています。もちろん素材によって異なり、10年未満のものもあれば20年以上使用できる場合もあります。
このような大きな差が現れるのは、セラミックが使用されている歯の劣化がそれぞれの口内状況によって大きく異なるためです。
劣化を防ぐためには日頃のメンテナンスがとても重要となります。
セラミックが人気な理由
セラミック治療は、近年とても人気が高まっています。まず第一にあげられるのが審美性です。本物の歯と見分けがつかない自然な美しさを、半永久的に保つことができます。
どんな色にも着色することが可能な素材です。そのため、数あるサンプルの中から細かく色の種類を選ぶことができるだけでなく、歯の特徴に合わせて部分的に色を足すこともできます。
表面をツルツルに仕上げられるので、他の樹脂系の素材では得られない本物同様の滑らかな表面や輝きを出せる点も魅力です。
また、とても硬く経年劣化もしないので、摩耗したり、変質・変色、着色がほぼ起こらず、半永久的に見た目が変わりません。
安全性の高さもメリットのひとつです。物質が安定しており、身体に害を及ぼすような変化が起きにくいという性質があります。
変質や変性、化学反応がなく、溶け出す物質もないため、アレルギー反応が起きない物質です。
滑らかな表面によって、虫歯や歯周病の原因となるプラークが付きにくいという特徴があります。
また、歯と非常に良く接着するため、細菌が侵入しにくく虫歯の再発を予防します。出来る限り歯を削らずに必要最小限の虫歯治療を行う上で、非常に有効です。
近年、銀歯からセラミックインレーへの付け替えを希望する人が増えています。どのような流れで治療を行うのか、予め把握しておくと安心です。
付け替えを行う際には、カウンセリングで希望をしっかり伝えるようにしましょう。
カウンセリング後は、すでにある詰め物を外します。銀歯の下で虫歯が進行している場合には、しっかりと治療をおこなうことが重要です。
インレーを入れるために、詰め物が入る部分の形を整え、この時同時に本来の歯の色調を確認し、詰め物を作成するための型取りをします。
歯科技工所で修復物を作製したものを、接着して仕上げます。
セラミックは、健康保険では認められていない素材のため、治療は保険適応外の自費治療です。幾つか種類があり、純度や製作法によって費用が異なります。
詰め物は大体30,000円~50,000円前後で行われるのが相場です。被せものや差し歯全体に使用する場合は、1本辺り100,000円以上かかります。
また、内側を人工ダイヤモンドにすることで、審美性に加えて耐久性や強度に優れた「ジルコニア」は、クラウンで90,000円~11,0000円、詰め物で50,000円~65,000円が相場です。
保険適応外の治療ですが、見た目が自然で美しく、身体への安全性の高い上、周りの歯への影響も優しいなど多くのメリットがあります。
半永久的に健康な美しい歯を保てる点などを考慮して、虫歯治療の際は検討してみましょう。
金歯について
次に金ですが、金合金や白金加金という素材が用いられます。歯科医寮で使用され金は、物体を噛み締める顎の力を高めるために金100%ではなく、他の金属を混ぜ合わせています。
金の歯はゴールドクラウンといい、本来の歯と同様の固さであるため強度が高く、噛む力が強い方や歯ぎしりや食いしばりのある方にも適用できます。
残された自分の歯をいためることも少なく金属の溶け出しがほとんと無いと言われており、金属アレルギーにもなりにくいという利点があります。
金色をしていて目立つため、付ける身としてはあまり良くない印象をもっている方もいるかと思いますが、実は金属の中でも歯に馴染みやすい特徴をもっているのです。
金は、金属の中では柔らかい性質をもっています。そのため、取り付けてから噛んでいくうちに土台となっている歯に付けた金歯が馴染んでいきます。
虫歯再発の原因となる歯と被せ物の隙間がなくなるため、銀歯と比べると虫歯を発生させにくい性質だと言われています。
金歯とセラミック、選ぶとするとどちらのほうがいいのか気になるところですが、誰に対しても同じ回答とは限りません。ただ、注目すべきは見た目と強度です。
日々の生活の中で特に奥歯には大きな力がかかっています。食いしばりがある方や、強く噛む癖のある方の場合は奥歯に関しては強度重視で金歯が最適と言えるでしょう。
セラミックは陶器と同じ素材が使われています。強い力が加わった場合、割れてしまったり欠けてしまうというケースもありますので、歯科医師に相談することをお勧めします。
食いしばりをする方であっても強度によってはセラミックでも全く問題ないこともあります。
現状の歯の状態を見てもらうことで、どのレベルの食いしばりなのか知っておくと今後の選択肢の判断材料にもなります。
もし詰め物や被せ物が取れてしまったら
詰め物は予期もしないタイミングで取れてしまいます。詰め物が取れる原因は4つあります。
一つ目は虫歯です。
詰め物をしていても虫歯は発生します。日頃の歯磨きを疎かにしていると、詰め物と歯の隙間に虫歯菌が侵入してしまうことがあります。
それによって詰め物の下に虫歯が発生した場合、詰め物が外れやすくなってしまいます。
二つ目は噛み合わせです。
長い時間が経つと元々の噛み合わせから少しずれていくことがあります。
噛み合わせが悪くなっていくと、詰め物を付けた時はぴったりであったとしても、ある日突然取れてしまうことがあります。
三つ目は歯ぎしりや食いしばりです。
日々負荷が積み重ねられてしまうことで詰め物の一部が欠けてしまったり、取れてしまうことがあります。
四つ目は詰め物の劣化です。
詰め物を歯に付ける際には医療用の接着剤が使われます。これは劣化していくものであるため長期間になると自然と取れる可能性は大きくなります。
以上が詰め物が取れる原因となります。原因は一つではないため、誰しも予期しない時に取れることになると思います。
万が一詰め物が取れてしまった場合、不安になると思いますが具体的にどのような状況なのか知っておくことが大切です。
歯はもともとエナメル質によって覆われています。しかし、詰め物が付けてある歯は削ってあるためエナメル質には守られていない状態にあります。
詰め物が付いている状態であれば、エナメル質ではなく詰め物によって覆われているため問題ないのですが、それが取れてしまった場合、保護するものがないため剥き出しの状態になってしまいます。
剥き出しになっている部分を像牙質といい、非常に柔らかいため虫歯が発生しやすく進行も早い場所になります。
また、刺激に敏感であり、冷たいものや熱いものが触れるとしみて痛く感じます。
また、詰め物が取れた状態の歯は割れやすくなっています。硬いものを噛んでしまうと、ヒビが入ってしまったり場合によっては割れて抜歯になる可能性もあるので注意が必要です。
更に、一見関係ないと思われる歯肉にも影響することがあります。歯肉が腫れてしまうことがあるのです。
どういうことかというと、詰め物が取れたことによって食べかすが隙間に詰まりやすくなります。
そしてその食べかすが重なって蓄積された状態になると歯肉を圧迫する状態となります。この状態によって歯肉が腫れることがあります。
かなり酷い状態になると歯肉が下がってしまうこともあります。
このように、詰め物が取れた状態は危険が隣り合わせです。運が良ければ当日の緊急対応をしてくれる歯科医院もありますので、一刻も早く予約をして1日でも早く治療しましょう。
最新の虫歯治療とは!?
注意していても、歯磨きをよくしていても虫歯ができてしまうことは往々にしてあるものです。
虫歯治療の時のキーンとした音や歯を削る音が嫌で歯医者さんから遠ざかっている人は多いと思いますが、最近では虫歯の治療への考え方などが進化してきているため、早めの治療や定期検診をきちんと行うことで嫌な思いをすることは減りそうです。
最近では少しでも虫歯が出来たら削ると言うことは少なくなりました。
虫歯のごく初期の段階で、エナメル質の部分にできた小さな虫歯であれば削るのではなく、経過観察となることが多いようです。
虫歯を削るよりも口内環境を良くして、自然と虫歯が治癒できることを目指す方向となっています。
具体的な方法としてはフッ素を塗布すること、食べ物の制限をすること、カルシウムの宝庫である唾液の質を検査して原因を特定してから治療を決めること等が挙げられ、多種多様な治療の選択肢があります。
初期虫歯ではなく、もう一歩進んでしまった虫歯でも、何回も治療に通わなければならないような治療はしません。
最近ではコンポジットレジンという素材を用いて短時間で虫歯治療ができます。
コンポジットレジンは、プラスチックのペースト状のもので、虫歯を削ったところに注入し、特殊な光を当てることで固まります。
そしてこのコンポジットレジンの質も向上してきており、今までの虫歯治療では詰め物をしなければならないケースでも、コンポジットレジンで対応できる頻度が高くなりました。
虫歯治療が簡略化できているのは、このコンポジットレジンのおかげでもありますが、歯の細部を見ることができるCTやマイクロスコープなどの発達も功を奏しています。
エナメル質など歯の表面に近い部分でしたら、コンポジットレジンを使っての治療が可能です。
しかしながら、歯の根元に近い部分まで虫歯が進んでしまい、歯の神経までいってしまった虫歯は神経を温存するか神経を抜く処置をしてから詰め物をすることになります。
中には、詰め物に隙間ができてそこから再発する、といったことを繰り返し歯を失ってしまう人もいるといいます。
放置していると症状が悪化してしまうため基本的には削る必要があるのですが、結果として再発を招いてしまうこともあるのです。
最新の虫歯治療の中には、歯を削らない方法もあります。
削らずに済めば、治療中に不快な思いをすることもありませんし、再発によって歯の寿命を縮めてしまう恐れもないでしょう。
最新治療法の一つに、ドックベストセメントがあります。ドックベストセメントとは、殺菌力のあるセメントを詰め物として使用し、虫歯の菌を無くすという治療方法です。
この方法の場合、歯の表面をある程度削ってから、詰め物をする必要があります。しかし神経に達する部分まで削らなくても済む、というメリットがあるのです。
従来の治療では、虫歯が奥深くまで達していた場合、神経を抜くといった処置がとられていました。神経を抜かずにいると、強い痛みが生じ続けてしまうためです。
また治療せずに放置していれば、さらに症状が進んで最終的には歯そのものがだめになってしまいます。
神経を抜いてしまった歯の寿命は、短くなってしまいます。痛みを感じなくなってしまうため、虫歯が再発してもなかなか気づけず、悪化した状態になりやすいのです。
歯を一生残していくためには、できるだけ神経を取らないほうが良いとされています。
ドックベストセメントを使用すれば、深い虫歯でも神経をなるべく残す形で治療することが可能です。歯の寿命を損なわない、効果的な治療方法だといえるでしょう。
ただしセメントには銅や亜鉛などが用いられているため、金属アレルギーがある方には適していません。
また神経に影響しない初期の虫歯には、基本的に適用されない治療方法だといえます。
初期の虫歯を削らずに治すことができる方法としてはヒールオゾン治療が挙げられます。
ヒールオゾン治療は、優れた殺菌力を持つオゾンの作用を利用して虫歯を治すという治療方法です。
ごく初期の虫歯であれば、ドリルを全く使用せずにオゾンだけで治療することも可能だとされています。またある程度症状が進行している場合でも、削る量を少なくできるのが魅力です。
ヒールオゾン治療は、2ミリ以下のごく小さな虫歯にだけ行われます。
こまめに歯科医院で検診を受け、初期の虫歯があったらヒールオゾン治療を受ける、という形であれば削る治療を一切受けずに、健康な歯を保ち続けることができるかもしれません。
3Mix法も、削らずに治す代表的な治療方法の一つです。3種類の薬剤を虫歯部分に詰め、抗菌作用によって患部の殺菌を行います。
この方法の特徴は、歯の象牙質を殺菌するため再石灰化する可能性がある、という点にあるでしょう。
また削る量を最小限に抑え、神経を抜かずに処置できるというメリットをもっています。虫歯治療だけでなく、歯周病治療にも用いられている方法です。
いずれの方法も、歯の悪い部分を取り除くのではなく、虫歯の菌を除去するという特徴を持っています。
症状によっては歯を削る場合もありますが、殺菌力のある薬剤等を使用することで、本来の歯と神経をある程度残すことが可能となるのです。
削る範囲を減らすことができれば、虫歯の再発リスクを下げることができます。削る治療が苦手な方、歯の寿命を残したい方は削らない最新治療法に注目してみましょう。
虫歯治療に使われる麻酔
重度の虫歯治療を行う場合には、ほとんどの場合麻酔を使用してから治療を行います。
一言で麻酔といっても、虫歯治療で使われるものは大きく分けて3種類があります。種類によって持続時間が異なります。
歯科で使用されるものは基本的に、局所麻酔というものが使われます。
これの一般的な性質としては、治療を行う場所の周囲に薬液が止まることで周辺の神経伝達を一時的に遮断する効果があることです。
また、他の組織に障害が行かない、低濃度で効果が発現して毒性も低く、注入部分から血液中に吸収されると作用が速やかに消失するというということが挙げられます。
多くの場合利用されるのが、表面、浸潤、伝達の3種類の方法です。
表面は、注射で注入する箇所の粘膜に塗るタイプの薬です。口の中の粘膜表面は皮膚に比べて痛いと感じ部分が多いため注射針を刺入し、薬液を入れると痛みを感じてしまいます。
そのため、あらかじめ表面に麻酔を塗っておき、時間を置いた後に注射することで刺入するときの痛みが少なくなります。
口の中に注射をするのに対して抵抗がある人に対しても、なるべく苦痛を減らすために用いられます。
様々な形状のものがあり、軟膏やゼリータイプ、ガーゼや脱脂綿、綿棒などに浸して直接粘膜面に塗るもの、テープ状のものは直接粘膜に貼りつけて使います。
表面を使った後に利用されるのが、浸潤です。歯科で最も利用されています。麻痺させたい部分に直接薬液を注入して、痺れさせるとという方法になります。
歯茎から薬液を注入させることで痛みが発生するため、現在では普通の注射針を用いる方法以外にも、不快感を減らすために薬液の温度をコントロールしながら一定速度で薬液を注入することができる電動式注射器が使われることもあります。
主に、親知らずを抜くときや、下の奥歯を治療するときに使われるのが伝達です。
下の歯が埋まっている骨は、上の歯が埋まっている骨よりも硬いのが特徴です。そのため下の歯を治療する場合には、時間がかかったりしてしまいます。
浸潤では効きにくいというケースもあって、そんなときにはこれを使用します。
かなり広範囲で痺れるのが特徴で、治療したい部分だけではなく舌や唇なども痺れます。人によっては5〜6時間と長時間効果があることもあります。
その他、妊婦や授乳中に利用されるリドカインという種類もあります。作用発言が早く、少量で効果を発揮します。体に対する刺激作用が少なく持続性も長いなどが特徴です。
このような種類がありますが、それぞれ打つ場所も持続時間も変わってきます。薬の効果は個人差があります。
歯茎に注射した場合には、大人で約1〜3時間程度、子どもだと薬の量も少なくなり約1〜2時間程度の効果が得られます。
親知らずを抜くときなどに使う伝達の場合は、大人なら約5〜6時間、子どもでは半日以上効いている場合もあるとされています。
このような長い時間に効果があると、麻酔後に食事をするというケースも考えられます。治療後すぐの食事は避けた方がいいです。
完全に切れるまで食事をするのを我慢するのも難しいですが、そんなときにはできるだけ柔らかい食事を心がけます。
硬いと誤って唇を噛んでしまうこともあるため注意が必要です。出来るだけ冷めたおかゆや柔らかく煮た適温のうどんやスープなどがおすすめです。
熱さにも鈍くなってしまっているため、熱いものを食べると火傷しても気づかないため冷めた状態のものを食べるようにします。
大きな食材も食べやすい大きさにカットして、噛む回数を減らします。
虫歯治療が行われる際、痛みが何より怖いと思います。それを解決してくれるのが麻酔です。これにより、患者さんは安心して治療を受けることができているのです。
また、ここで使われる麻酔は痛みを抑えるだけではありません。種類によりますが、出血を抑える役割を担うものもあります。これにより、歯科医師が治療を行いやすくなります。
現在歯科で利用されている麻酔は安全性が高くアレルギー反応を起こしにくくなっています。
しかし、アレルギーが起きたことがある場合には、事前に歯科に報告してから治療してもらうことが大切です。
妊娠中に治療が必要となったとき
妊婦さんが虫歯治療を受けるのは、安定期の5ヶ月〜7ヶ月であれば問題ないとされています。
妊娠初期や妊娠後期から臨月の時期は治療が母体の負担となるため相談しながらの治療となります。
妊娠中は口内に影響が及びやすい期間となります。
例えば、つわりによってなかなか歯磨きができず虫歯ができてしまったり、ホルモンバランスの崩れによって歯肉が腫れてしまったりすることがあります。
妊娠中は虫歯治療ができないというわけではありませんのでご安心ください。
ただ、時期によっては応急処置にとどめておく必要があったり、状況によっては歯科と産婦人科で医療連携を行なって治療を進める場合もあります。
多くの治療時に使われている麻酔薬はドカイン製剤という局所麻酔薬で、お腹の中の赤ちゃんへの危険性ないと言われています。
レントゲンに関しても影響はないとされていますので、歯の痛みによるストレスを我慢するより、歯の治療を行なったほうが赤ちゃんにとっても良い選択となるのではないでしょうか。
精神的にも不安を感じやすい時期となりますので歯科医師としっかり相談して安心して治療を受けることが大切です。